前回の労務コンパスでは令和8年10月から義務化されるカスタマーハラスメント対策について述べましたが(https://compasso-sr.jp/column/976/)、同時に法的に義務化される、「求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策の義務化」(以下「求職者等に対するセクハラ対策の義務化」)についても準備は万全でしょうか?

今回はカスハラ対策とセットで漏らさず押さえておきたい、求職者等に対するセクハラ対策について解説します。

これまでのセクハラ対策との違いは?

「求職者等に対するセクハラ対策の義務化」について、厚生労働省は、「事業主が雇用する労働者による「性的な言動」により求職者等による求職活動等が阻害されるものをいう」と定義されています。 ハラスメント対策については、これまで様々な類型に対し法的な整備が進められてきましたが(https://compasso-sr.jp/column/283/)、今までのハラスメント対策から、前回のカスハラ対策で大きく変わった点としては、顧客という外部の人間に対しも、その対策範囲を広げたという点が挙げられていました。今回の「求職者等に対するセクハラ対策の義務化」でも同様に、これまでのセクハラ対策の保護の対象として新たに「求職者等」が含まれるようになった点が大きなポイントになります。

これまでのセクハラ対策について

セクハラは、男女雇用機会均等法において20年以上も前に定義されており、社会的な認識もかなり浸透してきていると言えますが、対策として具体的に何をすべきかと問われると戸惑う方もまだ多いことでしょう。改めておさらいしますと、セクハラ対策で義務化されている措置は主に以下の6点です。

  • セクハラを許さない方針を明確にし、労働者へ周知・啓発すること
  • 相談窓口を設置し、相談に適切に対応できる体制を整備すること
  • セクハラの相談があった場合は、迅速かつ適切に事実確認・対応を行うこと
  • 被害者への配慮や加害者への適切な措置を講じること
  • 相談者や協力者に対する不利益取扱いを禁止すること
  • プライバシー保護や再発防止策を講じること

「求職者等」「求職活動等」とは?

「求職者等に対するセクハラ対策の義務化」でも、これまでのハラスメント対策と基本的には同じ考え方になり、今回そこに加えられた「求職者等」の「求職活動等」とは、どういったものを意味しているのか、その点をよく整理することが重要です。

 【求職者等とは】

■求職者(企業の求人に応募するもの)

■求職者以外の者であって、

・事業主の実施する労働者の採用に資する活動に参加する者(※)

・教育実習、看護実習その他の実習を受ける者

※いわゆるインターンシップが想定されていますが、その他、企業が行うイベントも含まれると考えられます。

【求職活動等とは】

 求職者が行う求職活動や求職に類する者が行う職業の選択に資する活動を指し、例えば以下のものが含まれます。なお、SNS等のオンラインを介したものやオンライン上で行われるものも含まれます。

・企業の採用面接への参加

・企業の就職説明会への参加

・企業の雇用する労働者への訪問(OB・OG訪問)

・インターンシップへの参加

・教育実習、看護実習等の実習の受講

つい、企業としての親しみやすさの表現として、説明会でボディタッチをするなどといったこともあるかもしれませんが、そのような振る舞いは非常に危険でしょう。逆に、インターンシップにおいて、ある程度の期間を過ごし、親しくなったように思える求職者等に対し、うっかり気が緩んで性的な冗談やからかいを言ったり、執拗に私的な食事に誘い続けるといった行動も、求職者等に対するセクハラの事例としてあげられています。 また、厚生労働省が強調している「SNS等のオンラインを介したものやオンライン上で行われるもの」については、内定者SNS等々、今後、より活用が進められることが予想されますが、距離感を間違えやすく、セクハラが発生しやすい状況になりかねないため注意が必要です。

今後必要になる対応について

セクハラ対策に「求職者等」および「求職活動等」という考えが加わったことにより、新たに必要となる対応は以下の通りです。

■事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発

 求職活動等に関するルールをあらかじめ明確化し、労働者及び求職者等に周知・啓発する

■相談体制の整備

 相談窓口をあらかじめ定め、求職者等に周知する

求職活動等に関するルールについて、具体的には、面談時間及び場所の指定、実施体制、やり取りに用いるSNSの種類の指定、面談等を行う際の規則など(1対1にしない、短時間にする)等が挙げられています。

また相談窓口については、採用担当者を設定してしまうと、当然相談しづらく、窓口として機能しなくなってしまうため、別の者を設定することが求められます。

まとめ

厚生労働省は、セクハラ事例を述べた後に「求職者等に対するセクシュアルハラスメントは、男性も女性も、加害者にも被害者に もなり得る問題です。 異性に対するものだけではなく、同性に対するものも該当します。」と注意喚起しています。 ハラスメントは、私たちが無意識に持っている偏見が原因となって引き起こされていることがほとんどです。(https://compasso-sr.jp/column/451/) ハラスメントは社外から受けたものも、また社外に対して行ってしまったものも対策を講じていかなければいけないという転換点に来た今、どのようにルールを整備し、再教育していくべきか等、お悩みございましたら、是非、コンパッソ社会保険労務士法人までご相談ください。

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