労働基準監督官が突然やってきた!調査対応のポイント解説

労働基準監督官が突然会社にやってきて驚いたという経験のある方は少ないと思いますが、悪いことをやっていなくても労働基準監督官が突然会社へやってくることはあります。

労働基準監督官がやってきてもその対応に慌てないために今回は労基署調査のポイントについて解説したいと思います。

調査のパターン

労働基準監督署の調査のことを監督や臨検と言います。大きく分けて以下の3つの種類があります。

申告監督(申告臨検)

在職中の従業員や退職した従業員からの申告(いわゆるたれ込み)に基づいて実施される調査になります。

定期監督(定期臨検)

定期的に実施される調査になります。基本的に第○次労働災害防止計画に基づいて対象事業所が選定されることが多いです。2023年4月から第14次労働災害防止計画が実施されています。

労働災害に基づく監督(労災臨検)

労災保険申請書に記載された事故の経緯が労働基準法や安全衛生法に違反している可能性があると判断された場合に実施される調査です。重大な事故が発生した場合に実施されることが多いです。

調査の流れ

調査の流れは概ね次の通りです。

①調査の通知→②調査の実施→③是正勧告書及び指導票の交付(不備事項があった場合)→④是正報告書の提出

以下で順番に詳しく確認していきたいと思います。

① 調査の通知

調査の通知方法は、郵送による文書での通知、労働基準監督官が来訪して通知する、のいずれかの方法が多いです。

申告監督で労働者の身体・生命に危険がある場合や、証拠隠滅の恐れがある場合など、労働基準監督署が相当悪質と判断した事案については、突然やってきてすぐに調査開始ということもありますが、この調査通知のための来訪が「労働基準監督官が突然やってきた」という事例の大半になります。

この来訪による通知は定期監督の際にも多くあり、来訪目的を確認するまでは驚く必要はありません。多くの場合で調査日と調査日に準備をしてほしい書類が記載された書面を持って、調査を実施する労働基準監督官自身が来訪することが多く、就業規則の保管場所等の基本的な確認をされることはありますが、その日は書面を受け取って終了となることが多いです。

調査については法律に基づいて実施されるため、拒否することはできませんが、調査日を変更することは可能です。調査日に都合が付かない場合や調査資料の準備に時間がかかる場合は早めに連絡し、調査日の変更をしましょう。

次に調査までに準備する書類ですが、以下の書類を準備するように通知をされることが多いです。

・就業規則(賃金規程等の別規程を含む)

・労働条件通知書または労働契約書

・タイムカード等の労働時間が確認できる書類 

・賃金台帳

・時間外労働・休日労働に関する協定届

・変形労働時間制を採用している場合はその関係書類(労使協定届や勤務表等)

・衛生委員会の議事録等、衛生委員会での調査審議状況が確認できる書類(50人以上の事業所の場合)

・健康診断個人票

・医師による面接指導の制度及び実施状況が確認できる書類

② 調査の実施

調査は調査書類を監督署に持参(出頭)して調査が実施される場合と、労働基準監督官が会社に来訪して実施される場合のいずれかになります。小規模の会社では出頭調査、中規模以上の会社では来訪調査となるケースが多いように感じます。

 主な調査内容は以下の通りです。

 ⅰ残業代の未払い等、賃金の未払いが発生していないか

  ※約束された給与や法律で決まっている残業代は必ず支給されなければなりません。

 ⅱ長時間勤務となっていないか、協定違反となるような勤務実態が無いか

  ※時間外労働・休日労働に関する協定届に記載された時間以上の残業は法律違反です。

 ⅲ労働条件通知書や労働契約書等が交付されているか

  ※書面により労働条件が通知されていなければなりません。

ⅳ就業規則等が作成され、周知されているか

 ※従業員10人以上の会社では就業規則の作成が必要です。就業規則は全従業員が知っている必要があります。

ⅴ最低賃金が守られているか

 ※毎年改定される最低賃金以上の給与が支給されている必要があります。

ⅵ健康診断が実施され、就労の可否判断等も含めて記録が保存されているか

 ※毎年1回の健康診断の実施が義務づけられています。その結果の確認も必要ですし、所見がある場合は精密検査や医師の面談なども必要となってきます。

ⅶ安全衛生管理体制について

 ※従業員50人以上の会社では衛生管理者の選任なども必要です。また、社内で機械や車両を使っている場合は整備状況の記録や免許・講習受講等の確認も必要です。

③是正勧告書及び指導票の交付(不備事項があった場合)

調査の結果、法律違反が見つかった場合は「是正勧告書」が交付されます。また、法律違反とまでは断定できないが改善事項がある場合は「指導票」が交付されます。

④是正報告書の提出

「是正勧告書」または「指導票」が交付された場合は「是正報告書」または「改善報告書」を提出して指摘事項が是正されたことや改善されたことを報告する必要があります。これをやらないと再監督や場合によっては送検(令和5年度の送検件数841件)されることもあります。

調査対応のポイント

  • 申告監督であっても即時調査は多くありません。調査期日までに調査書類の確認と精査が必須です。社会保険労務士などの専門家に依頼して間違いないように確認しましょう。また、この時点で明らかな法律違反が判明した場合は事前に改善し、調査の時点で改善したことを報告すれば、是正勧告書交付では無く指導票の交付にとどまることが多いです。
  • 定期監督は労働災害防止計画に基づいて実施されることが多いです。現在進行中の第14次労働災害防止計画では以下の事項が重点項目となっています。

ⅰ労働災害防止の対象労働者

  ・中高齢の女性 ・高齢者 ・外国人

 ⅱ労働災害防止の対象業種

  ・陸運業 ・建設業 ・製造業 ・林業

そのため、中高齢女性を多く雇用している小売業や介護・福祉事業、高齢ドライバーが増えてきた陸運業、外国人を雇用している建設業、工場団地に立地している製造業などは定期監督の対象となる可能性が高いです。このような業種の会社は労働基準監督官が来訪するかもと思って準備をしていただいて損は無いと思います。

  • 調査の際には社会保険労務士などの専門家に調査立会を依頼しましょう。労働基準監督官は職責上どうしても労働者に寄り添った法律の見解・解釈が多いです。会社に寄り添った見解・解釈に基づくアドバイスがもらえる専門家に立ち会ってもらうことで中立的な調査となることが多いです。

まとめ

ここまで見てきたように労働基準監督官が会社に突然やってきても驚くことはありません。来訪の目的を確認し、調査だった場合は淡々と調査の準備・対応をしていきましょう。そして困ったら必ず社会保険労務士などの専門家に相談しましょう。そうすれば労働基準監督署の調査も必ず乗り切ることができます。

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